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中国人被爆者の足跡掘り起こし 元高校2教諭調査 碑建立目指し会設立へ

 広島で被爆した中国人留学生たちの存在に光を当て、慰霊碑の建立につなげようと、ともに元高校教諭の楠本昭夫さん(62)=廿日市市=と多賀俊介さん(71)=広島市西区=が関連情報を集めている。「中国人被爆者の碑を考える会(仮称)」の年内結成を目指す。(桑島美帆)

 楠本さんはボランティアで各国からの留学生たちに平和記念公園を案内している。その中で「なぜ中国人の原爆慰霊碑がないのか。もっと知り、伝えたい」との思いを強めたという。

 広島では、安野発電所(安芸太田町)の建設工事で強制労働をさせられた中国人が広島刑務所(現中区)で被爆している。留学生については、生存者の王大文さん(95)らが広島を再訪しているが、原爆資料館の展示説明などもわずか。楠本さんは情報を求めて平和活動で知り合った多賀さんに相談し、中国人被爆者について研究する島根大特任講師の楊小平さん(40)とつながった。

 楊さんによると、日本の関東軍が実質的に統治した旧満州(中国東北部)や内モンゴルなどから広島大の前身の広島高等師範学校と広島文理科大に来ていた12人が被爆し、6人が死亡した。塚本町(現中区猫屋町)に寮があり、近くで医院を営んでいた故長谷信夫医師が世話をしていたという。

 楠本さんたちは、被爆直後に留学生たちを受け入れた正行寺(廿日市市)の関係者への聞き取りなども進めている。「日本の国策の下で被爆した若者のことや、長谷医師たちとの交流について掘り起こし、日中の若い世代の交流のきっかけをつくりたい」と話す。

(2021年8月2日朝刊掲載)

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