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旧満州開拓団史 冊子に 新市の旧常金丸村 郷土研究会が編集 分村計画や入植 手記・証言も

 福山市新市町の住民でつくる常金丸・藤尾郷土研究会が、地元の旧常金丸村(新市町常、金丸)から旧満州(中国東北部)へ渡った開拓団の歴史を本にまとめた。分村計画から入植、帰郷の経過や元団員の証言などを編集。「あまり語られてこなかった地域の歴史。後世に引き継いでいきたい」と思いを込める。(野平慧一)

 A4判で「常金丸分村満州開拓団追憶史」と題し、資料編(50ページ)と回想録編(48ページ)の2冊。研究会が集めた当時の村役場の資料や元団員への聞き取り、日記などを基にまとめた。

 研究会などによると、常金丸村の78世帯211人が開拓団を結成し、1944年1月に満州中央部の吉林省徳恵県松花江村へ入植した。ほぼ半数が戦後の混乱で命を落とし、帰郷がかなわなかった。

 回想録編は、敗戦時の様子や帰郷後の貧しい暮らしなどを描いた当時の手記や証言を載せた。逃げる途中にわが子に手をかける母親、栄養失調から病気になり亡くなる団員などが生々しい証言でつづられる。

 資料編は、分村計画や入植までの流れ、開拓の経過を紹介。開拓団への応募者が少なく地区ごとに人数が割り当てられ送り出しが進められた経緯も記した。

 研究会は2年前、元団員の講演会を町内で開催。参加者からの反響もあり、講演内容を含む資料をまとめた。石口寛治代表(90)は「同級生の多くが満州へ渡ったが私は行かず、負い目を感じて生きてきた。元団員が高齢化する中、満州開拓とは何だったのか書き残しておきたかった」と話す。

 一般財団法人義倉(福山市)の助成金を使い、各100部作った。一部は近隣の公民館や図書館に寄贈した。希望者には千円(送料込み)で提供する。常金丸公民館☎0847(57)8135。

(2021年8月3日朝刊掲載)

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