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反戦詩に刻むあの夏の記憶 呉の大和ミュージアムで集い 

 反戦詩の朗読と声楽によるコンサート「8月の祈り」が2日夜、広島県呉市宝町の大和ミュージアムであった。原爆の日、終戦の日も近づき、市民たち約200人が戦争の犠牲者を追悼し、不戦の誓いを新たにした。(小島正和)

 呉港を望むギャラリーで、日本詩人クラブ会員の上田由美子さん(75)=広島市安佐北区=が自作の詩を朗読した。

 「海鳴りとともに深海を射抜いた光が/鉄の魂になってしまった戦艦に当たる」

 「原爆ドームを正視出来ない呪縛に捉われながら/八月の鐘を音もなく鳴らし続けるのだ」

 戦艦大和とともに沈んだ約3千人の乗組員に思いをはせた「海軍兵学校」や、祈りに包まれる広島の夏の情景をつづった「八月の夕凪(なぎ)」など5編。一節一節かみしめるような朗読に、目頭を押さえる聴衆もいた。

 海軍大佐だった父は南太平洋で戦死。自身も入市被爆した。上田さんは「二つの経験を背負う者として、沈黙は許されない」と、全国で反戦詩の朗読を続けている。

 多くの軍人が戦地に向かい、空襲で町が焼かれた呉市。親交のある声楽家下松由夏さん(47)=呉市広三芦=とともに同市にあるミュージアムでのコンサートを企画した。

 市内の主婦中尾和子さん(51)は「詩が心に深く刻まれた。戦争で亡くなった人たちの姿が浮かぶようだった」と話していた。

(2013年8月4日朝刊掲載)

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