×

ニュース

岡山空襲 多角的に迫る 北区で展示会 15日まで 行政文書や被災者の証言・絵など260点

 1945年6月29日の岡山空襲を中心に、岡山県内の戦禍や戦後の復興を伝える岡山市主催の「岡山戦災の記録と写真展」が同市北区の岡山シティミュージアムで開かれている。44回目の今年は「つないでいく記憶と記録」がテーマ。行政文書などの記録とともに、被災者の記憶に基づく初公開の絵や証言も豊富に並べ、多角的な視点から岡山空襲に迫っている。(伊東雅之)

 関連資料約260点を展示。初公開となる2枚の油絵「記憶の中の空襲」は、14歳の時、岡山空襲に遭った窪田裕一さん(90)=東京在住=が2年前に描き、市に寄贈した。1枚は、米軍のB29爆撃機が投下する無数の焼夷(しょうい)弾で炎に包まれる夜の市街地を祖母、母、姉と逃げた様子を描いた。もう1枚は、避難した岡山城の石垣の下から、焼け落ちる天守閣を見上げた記憶を絵にした。

 ほかにも、空襲体験者へのインタビューや手記などから得られた初公開の証言映像や文書もある。

 一方、記録資料としては、岡山市防空本部・警防課が作成した「防空警防詳報」などの公文書や、空襲による焼失地域や被災世帯、死傷者、身元不明者を記したマル秘文書を展示。当時の岡山医科大付属病院が残した被災者のカルテや死亡診断書、空襲前後に米軍機が撮影した岡山市中心部の航空写真なども並ぶ。

 岡山空襲で投下された焼夷弾の実物や、焼夷弾で上部が溶け落ちた釣り鐘などもあり、空襲のすさまじさを伝えている。

 岡山空襲ではB29の焼夷弾投下により、当時の市街地の約63%が焼失。少なくとも1737人が亡くなった。企画した市岡山空襲展示室の木村崇史学芸員は「官庁の記録などでは伝わらない人々の体験や思いにも触れることで、空襲の実態をより深く知ってもらえれば」と話している。

 8月15日まで(2、10日休館)で開館時間は午前10時~午後6時。無料。同展示室☎086(253)7070。

(2021年8月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ