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ベンガル語の被爆証言集「広島の声」出版 バングラデシュ人のプラシドさん

 バングラデシュの公用語で、インド東部でも話されているベンガル語の被爆証言集「広島の声」が出版された。さいたま市に住むバングラデシュ人のP・R・プラシドさん(49)らが3年がかりで準備。広島で被爆した17人の体験記を収めている。

 A5判変型、191ページ。物理学者の沢田昭二さん(81)や、被爆者医療に長年携わってきた肥田舜太郎さん(96)らの証言を、ベンガル語と日本語で併記している。

 沢田さんは、爆心地から約1・4キロの自宅で被爆。火災が迫り、下敷きになった母を残して逃げた無念さをつづっている。軍医だった肥田さんは、直後から負傷者を手当てした。差別を恐れ、被爆した事実を隠したまま亡くなった患者についても触れ、「被爆者が歩んだ人生を知ってこそ、被爆の本当の恐ろしさが分かる」との思いも記されている。

 プラシドさんは1991年に来日し、今は在日バングラデシュ人のための月刊誌の編集長を務める。71年のパキスタンからの独立戦争では、人が殺され、家が燃やされるのを目の当たりにした。「原爆の悲惨さや争いはよくないんだと母国の人々に伝えたい」と出版を企画した。

 八王子市原爆被爆者の会(東京都)の事務局長、上田紘治さん(71)や知人の協力で、2010年夏から翻訳や寄稿の依頼などを進めてきた。

 バングラデシュの学校にも贈る計画で、上田さんは「原爆による被害が二度とあってはいけないと、世界に広めるきっかけになる」と話している。

 1500円。上田さんTel090(6197)5354。電子メールueda@link.nir.jp(増田咲子)

(2013年8月5日朝刊掲載)

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