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被爆建物 劇で考えて 保存運動取材 同世代に訴え 舟入高生が上演

 1969年から原爆劇の上演を毎年続ける舟入高(広島市中区)演劇部が被爆76年の今年、「自分たちにできる平和活動」をテーマにした劇に取り組んでいる。原爆ドームの保存運動を通じて被爆建物の保存活用を考える創作劇を上演。秋には次作の発表を控えている。(桑島美帆)

 「変わる、変わらん、じゃなくて変えるんよ! 原爆ドームも被服支廠(ししょう)だって、今そうやって残っとるんよ」―。7月中旬、2、3年生約640人を前に部員12人が「パス・トゥ・ザ・フューチャー」を上演した。現代の女子高生が64年にタイムスリップし、取り壊しの危機にあった原爆ドームが市民の手で保存へと動いていく過程を描く。

 脚本担当の3年高橋遙香さん(17)が、保存運動の発端になった楮山(かじやま)ヒロ子さん(1944~60年)に関する記事を読んだのがきっかけだった。昨年1月から資料を集め、被爆者や保存運動の関係者から聞き取りを重ねた。旧陸軍被服支廠の保存活用問題を報じるニュースも挿入し、今ある問題として捉えてもらおう、との願いを込めた。

 47年創部の演劇部が原爆劇に力を入れてきた背景には、前身の市立第一高等女学校で676人もの生徒と教師が原爆の犠牲になった重い歴史がある。一方、時代とともに作風は変化している。従来は顧問が書いていた脚本を2年前から生徒が創作し、題材もより現代に視点を置くようになった。「高校生に伝えるには高校生の目線が必要」と顧問の小山耕平教諭(28)は話す。

 現在、10月末の演劇大会に向けて「核兵器廃絶へ向けてできること」を題材に脚本を練っている。部長の2年宇多村侑香さん(16)は「今を生きる私たちが平和の大切さを考える劇にしたい」と意気込んでいる。

(2021年8月6日朝刊掲載)

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