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被爆者と家族 写真展 三良坂で「3世」の堂畝さん 「命のつながり 見えるものに」

 被爆者とその家族をテーマに撮影を続ける写真家堂畝紘子さん(39)=広島市中区=の作品展「被爆三世の家族写真―生きて、繋(つな)いで―」が、三次市三良坂町三良坂の三良坂平和美術館で開かれている。米軍による原爆投下から6日で76年。長い時間をかけて築いた家族の絆や命の尊さを写真が語り掛ける。(石川昌義)

 被爆3世の堂畝さんは2015年から被爆者の家族写真を撮影し始めた。これまでに広島、長崎で被爆した約90人の家庭を訪ね、被爆体験を聞き取りながら家族の表情を記録してきた。被爆者が老いを深める中、既に亡くなった被爆者の遺影と残された家族の写真を撮る機会も増えてきた。

 庄原市高町の入瀬涼子さん(65)は19年9月、父梶川益幸さんを家族が囲む様子を堂畝さんに撮影してもらった。鉄道員だった16歳の時、広島駅付近で被爆した父。長女の入瀬さんは「芸備線の線路沿いを歩き通しで庄原まで帰ったことや、三次でようやく口にした乾パンの味など、初めて聞く逸話も多かった」と撮影を振り返る。

 庄原市大久保町の実家に4世代10人が集まって撮影した翌月、益幸さんは体調を崩し、91歳で亡くなった。入瀬さんは「孫、ひ孫に囲まれた、いい表情を残してくれた」と感謝する。

 20家族約60枚の写真を集めた三良坂平和美術館での展示は、堂畝さんにとっては最大規模となる。展示初日の7月31日のギャラリートーク。堂畝さんは来場者に「写真を撮影しながら、家族で対話する時間を大切にしてきた。写真家の私ができることは、命のつながりを目に見えるものにすること」と語り掛けた。会場には、入瀬さん夫妻の姿もあった。

 同館が毎年夏に開く「平和展」の一環。元泉園子館長(63)は「展示を準備する中で、県北の人からも『私も被爆3世』という声を多く聞いた。若い世代が命の重みを考えるきっかけになれば」と期待する。

 9月5日まで。一般400円、65歳以上300円、高校生200円、中学生以下無料。午後8時まで開館する8月6日は入館無料。同9日を除く月曜休館。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当面の間、三次市外からの来館自粛を呼び掛けている。同館☎0824(44)3214。

 堂畝さんは撮影に協力する被爆3世とその家族を募集している。「被爆三世 これからの私たちはプロジェクト」のホームページから申し込む。http://hibaku3sei.tiyogami.com/

(2021年8月6日朝刊掲載)

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