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平均89歳 埋もれた 声 残す 県内すべての被爆者に体験募る

県協議会 「最初で最後」表現問わず

 島根県原爆被爆者協議会(原美男会長)が、県内すべての被爆者から被爆体験を募っている。手記や絵や図、写真、音声メッセージなど表現方法は問わず、「未来へつなぐメッセージ」を求める。被爆者は680人(3月31日時点)で、平均年齢は89歳。埋もれている声を集めて次世代へ継承する。2023年以降に、毎年8月に開くパネル展での公開を目指す。(寺本菜摘)

 協議会が被爆者全員に被爆体験を募るのは初めて。堂前直行事務局長(69)は「平均年齢を考えても取り組みは最初で最後。平和を求める思いや被爆者としての願いなどのメッセージも寄せて」と呼び掛ける。家族の口述筆記でも受け付けている。

 13年には県内で特に高齢の被爆者から集めた証言など収めた50年史を発行している。しかし、ここ10年の間に五つの被爆者団体が解散し、現在は出雲・雲南市の2団体だけに。被爆体験の継承が課題となっている。原会長(94)が「語りたくても語れていない被爆者の声を掘り起こしたい」と募集を提案した。

 原会長もまた、これまで語り部活動などで話してきた自身の被爆体験を初めて手記にまとめ、パネル展へ出展する予定という。18歳の時、当時の祇園町(広島市安佐南区)で被爆。召集された広島の旧陸軍工兵隊(中国114部隊)で、同郷の友人たちと遺体収容や道路整備に追われ、「地獄のようだった」という日々などを振り返る。「こんな悲惨なことがあっていいのか、被爆者の一人として体験を記したい」と話した。

 被爆体験の募集は5月に呼び掛けを始めた。期間は22年12月まで。同協議会の主催する「原爆と人間展」で紹介する。

(2021年8月6日朝刊掲載)

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