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原爆犠牲者の記憶消せない 広島出身の漫画家・こうのさん、作品の思い語る

 過去といまをつなぎ、原爆がもたらした悲しみや家族愛を描いた漫画「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」の作者、広島市西区出身の漫画家こうの史代さん(44)=東京都=が4日、客員教授を務める広島市東区の比治山大短期大学部で講演するため広島を訪れた。こうのさんに作品に込めた思いや原爆、戦争を漫画で描く意味を聞いた。

 「夕凪の街―」は被爆10年後の広島と、現代の二つを舞台にした作品。「一瞬で多くの命を奪った原爆も、犠牲者と関わりある人たちの記憶までは消せない。語り継ぐとは、記憶を大切につなぐこと」と力を込める。

 雑誌連載で人気を博し、単行本になったのは2004年。「原爆や戦争は、いろんな語り口が必要。原爆を描いた漫画がもっとあってもいいのではないか」。こうのさん自身、08年に第2次大戦末期の呉市を舞台にした「この世界の片隅に」を出している。

 被爆68年。「いま描いておかないと、被爆体験の聞き取りができなくなってしまう」と感じる。「漫画家を志す人は戦争に関する作品に積極的に取り組んでほしい」と話した。講演は公開講義の位置づけで、約150人を前に「この世界―」を題材に漫画づくりの技術を紹介した。(石井雄一)

(2013年8月5日朝刊掲載)

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