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アントニオ・グテレス国連事務総長メッセージ ヒロシマ8・6

 広島平和記念式典の開催に際し、このメッセージをお送りし、原爆による犠牲者およびそれを生き延びた方々に敬意を表せることを光栄に思います。

 76年前のこの日、1発の原子爆弾がこの都市の人々に想像を絶する惨禍をもたらしました。原爆は数万の人々の命を一瞬のうちに奪い、その余波でまた数万の命を、そしてその後長い年月にわたり多くの人の命を奪いました。

 しかし広島は、この惨劇によってのみ語られているわけではありません。原爆を生き延びた被爆者の方々による他に例を見ない活動は、人間の不屈の精神力を証明するものです。自分たちが味わった苦しみや運命をほかの者がたどらなくてすむようにと、彼らは自分たちの経験を伝える活動に身をささげてきました。

 国連は、核兵器のない世界というビジョンを被爆者と共有しています。これはまた、総会決議第1号―広島への原爆投下からわずか5カ月後に可決―および今年1月22日発効の核兵器禁止条約のテーマでもありました。

 私は、核のない世界というゴールに向け進展が見られないことを深く憂慮しています。核兵器保有国は、近年核兵器の近代化を進めており、新たな核軍拡競争を引き起こしました。しかし、新戦略兵器削減条約(新START)を延長し軍備管理に向けた対話を行うというロシアと米国の決定は、核による破滅のリスクを減らすための歓迎されるべき第一歩となるでしょう。

 私は、核兵器を保有するすべての国に、単独および合同で核兵器のリスク削減措置を採択するよう呼びかけます。私たちは核兵器は使用してはならないという規範が当然のように存続すると考えてはいけません。

 私は各国政府に対し、核拡散防止条約(NPT)の第10回運用検討会議を通じ、核兵器のない世界へのコミットメントを強化するよう要請します。

 核兵器が使用されないことを保証できる唯一の方法は、核兵器の完全な廃絶です。核兵器のない世界というゴールに向け、国連および私は一個人として、引き続き全力で取り組んでいく所存です。

(2021年8月7日朝刊掲載)

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