×

ニュース

条約批准訴え続ける 原水禁・協 世界大会が閉幕

 原水禁国民会議と日本原水協がそれぞれ中心となった二つの原水爆禁止世界大会が9日、全日程を終了した。いずれも1月に発効した核兵器禁止条約への署名・批准を日本政府に訴え続ける姿勢を強調した。

 原水禁などの長崎大会は長崎市での閉会行事に約180人を集めた。長崎で被爆した川野浩一大会共同実行委員長(81)は禁止条約を巡り、日本政府に参加を求めても米国の「核の傘」の下で背を向けられる現状を「きつい」と表現。「それでもわれわれは頑張るしかない。闘う以外にない」と呼び掛け、拍手を浴びた。

 参加者はその後の平和行進で、日本政府に禁止条約の批准を求めるのぼりを掲げ、爆心地公園までの1・5キロを歩いた。公園内の原爆落下中心地碑前では原爆のさく裂時刻の午前11時2分、黙とうした。

 日本原水協などはオンライン集会で、各国の政府代表や平和活動家、被爆者が核兵器廃絶に向けて連携を深めると確認した。メキシコのメルバ・プリーア駐日大使は、禁止条約に全ての国が参加するよう促すには「被爆者の訴えや証言、知恵が必要だ」と訴え、被爆者の役割を説いた。

 東京高校生平和ゼミナールの田原ちひろさん(18)は「核兵器がある以上、私たちが被爆の当事者になる可能性がある。若い世代が解決していかなければならない」と誓った。各国政府に「一刻も早い核兵器廃絶が為政者の責務」と禁止条約への署名・批准などを求めるアピールを採択した。

 長崎市では、被爆者の証言を聞く集いを開いた。(樋口浩二、明知隼二)

活動強める工夫を コロナで規模縮小 若手活躍に光 大会総括

 被爆地で60年以上続く原水爆禁止世界大会は、新型コロナウイルスのあおりで昨年に続いて規模縮小を余儀なくされた。全国の平和運動の担い手が原爆の日に被爆地へ集い、被爆者の訴えをじかに聞いて日々の活動の原動力としてきた形式は、いつ取り戻せるかが見通せない。被爆者が老いを深める中、日頃の活動を強める工夫が求められる。

 原水禁国民会議は長崎では2年ぶりの有人開催にこぎ着けたが、広島は新型コロナの影響で直前に無観客へ転換した。日本原水協はオンラインを軸とし、現地では被爆証言を聞く集いを開くにとどまった。

 対面で討議が交わされた原水禁の長崎分科会では、世界で軍拡が進む中で核兵器禁止条約が発効した意義を専門家が解説。複数の参加者が質問し、議論が深まった。対面形式の利点をあらためて示した。

 今年は、広島原爆の「黒い雨」を巡る控訴審判決で原告全員が被爆者と認定されたのを受け、広島の他の被害者や長崎の「被爆体験者」の認定を求める声が高まった。こうした訴えを全国に浸透させるのは大会の最大の役割だ。オンライン参加にとどまった各地の平和運動の担い手たちと、思いを共有する必要がある。

 若手の活躍は光明だった。広島、長崎を通じた原水禁の全8分科会のうち7分科会で、30代以下が登壇した。国会議員に禁止条約へのスタンスをただす大学生の報告に「勇気づけられた」と語る参加者がいた。被爆者が高齢化した今こそ、核兵器廃絶の願いを受け継ぎ、行動する若い声が響く場としてほしい。(樋口浩二)

年別アーカイブ