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核禁止条約「追い風に」 国連事務次長 NPTと補完 来年3月 締約国会議

 国連で軍縮担当上級代表を務める中満泉事務次長は11日、日本記者クラブのオンライン記者会見で、1月に発効した核兵器禁止条約について「核兵器を減らす追い風にしなければならない」と述べ、核拡散防止条約(NPT)体制と補完し合い核軍縮を進展させる重要性を説いた。核兵器禁止条約の第1回締約国会議が来年3月22~24日に開かれることも明らかにした。(山中和久)

 中満氏は米国と中国との対立などを念頭に「核兵器保有国の緊張関係が悪化している」との現状認識を示した。一方で米国とロシアが新戦略兵器削減条約(新START)を5年間延長し、「戦略的安定対話」を始めたことや両国首脳が「核戦争に勝者なし」との原点を再確認した点を「強い希望を持った」と評価した。

 新型コロナウイルス禍で延期されたNPT再検討会議が来年1月4日から約4週間にわたり開催される見通しを示し、「核兵器が使用されるリスクを軽減する実質的な措置をつくり、軍縮に向けたステップに位置づけること」が成果として問われると指摘した。サイバーや人工知能(AI)など新興技術に関する議論の必要性にも触れた。

 再検討会議の結果を踏まえて開かれる締約国会議に向け、核保有国や米国の「核の傘」に頼る日本などに対し「核兵器禁止条約を批判するのではなく、NPTと補完関係をつくっていくことが必要」と訴えた。

 被爆者団体などは「唯一の戦争被爆国」として日本にオブザーバー参加を求めている。中満氏は、実現すれば「日本の立場を表明する機会になるのに加え、核兵器禁止条約が掲げた被害者救済、環境修復などの分野で知見を持つ日本の貢献にも期待が持たれることになる」と述べた。

 締約国会議はオーストリア・ウィーンで来年1月に開催予定だった。米ニューヨークでの再検討会議の開催が同1月を軸に調整されていることに伴い日程を見直した。

(2021年8月12日朝刊掲載)

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