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朗読で伝える 被爆の非情 アナウンサーら動画公開へ

 広島県内のアナウンサーたちでつくる「ひろしま音読の会」が、被爆作家の原民喜(1905~51年)と大田洋子(03~63年)の小説を朗読する動画づくりに取り組んでいる。2人の作家が被爆の非情を見つめ、生み出した作品。紡いだ言葉は真っすぐに原爆を伝える。同会は9月上旬をめどに動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開する。

 会のメンバーは7月下旬、広島市中区のアステールプラザで原民喜の「夏の花」や大田洋子の「屍(しかばね)の街」など全9作品の一部を朗読。現在は収録を終え、編集作業をしている。

 「自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ、僕は自分に繰返し繰返し云いきかせた」(原民喜「鎮魂歌」から)。「見馴れてみると、上下にひきつれて、そのまわりの焼けている眼に、表情があった。眼はおだやかに、うっすらと笑っていた。(中略)『うちは、やさしい人になりたい』」(大田洋子「ほたる」から)。

 死者の声に寄り添い、悲しみや喪失感を作品に刻み続けた民喜と、傷つきながらも懸命に生きようとする人たちの苦しみと怒りを描き出した洋子。佐藤千佳砂代表(57)=西区=は「それぞれの視点で冷静に力強く訴えてくる。作家の思いを感じながら聞いてほしい」と願う。

 会は2000年10月に設立し、現在13人が活動している。毎年夏に被爆者の手記や峠三吉の原爆詩などの朗読公演を開いてきた。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、昨年に続き動画を使って発信する。(鈴中直美)

(2021年8月12日朝刊掲載)

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