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日系人収容所の新聞寄贈 米で発行「トパーズ・タイムズ」 周防大島の資料館に 「戦争と差別の記録残して」

 山口県周防大島町の日本ハワイ移民資料館に、第2次世界大戦時に米ユタ州トパーズにあった日系人強制収容所で発行された新聞「トパーズ・タイムズ」を、町ゆかりの作家石浜みかるさん(80)=神奈川県=が寄贈した。この収容所で病死した同町出身の伯母の遺族から譲り受けたもの。「日米開戦から80年。戦争と差別に踊らされた人たちの記録を残して」と訴えている。

 トパーズ・タイムズは、収容所が開設された1942年から45年8月まで、日英両語で週3回発行された。ガリ版両面刷りで縦35センチ、横20センチ。43年3月~44年4月の約40号分を寄贈した。米政府からのニュースや集会、催しの案内、冠婚葬祭のお知らせが掲載されている。文芸欄もあり「四季毎に祖国を偲(しの)ぶ山姿…」などと収容者の思いが感じられる短歌や俳句も載っている。

 伯母の宗野ワキさんは20歳の時、ハワイに渡り石浜さんの母の兄勘一さんと結婚した。19年に米本土に渡り、3人の娘を授かった。しかし41年に日米が開戦。日系人は「敵国人」として強制収容所に集められることになり、伯母一家も42年、トパーズ収容所に入った。鉄条網に囲まれた生活の中、ワキさんは44年、乳がんで亡くなった。49歳だった。新聞は、終戦で収容所が閉鎖された時、家族が持ち出して保管していた。83年、石浜さんが一族の歴史を調べに米国の伯母の娘を訪ねた時、託された。

 石浜さんは戦時中、ハワイ移民から帰国した祖父母を頼って同町に疎開した。自身も80歳となり、伯母の出身地にある日本ハワイ移民資料館への寄贈を決めた。資料館の木元真琴館長(70)は「多くの日本人移民が戦時中、収容所に送られ苦労した。貴重な資料として保管したい」と話す。石浜さんは「あの戦争では広島で父母が被爆した。移民への差別も含め、悲しい歴史を繰り返してはいけない」と話している。(川井直哉)

(2021年8月15日朝刊掲載)

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