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被爆遺構移設「再考を」 サカスタと両立 広島市に要望書 被団協など

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)で出土した旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構を巡り、二つの広島県被団協を含む広島の被爆者6団体などは24日、市に要望書を提出し、遺構の一部を切り取って移設する方針を再検討するよう求めた。

 要望書は遺構を「国史跡級」と評価する専門家の声に触れ、「全面的な保存・活用とスタジアムの両立策を望む声が大きくなっている」と強調。①市が示した厩舎(きゅうしゃ)の床面など3カ所を切り取る方針の説明会の開催②幅広い専門家の意見聴取③遺構の上にスタジアムを建てて保存活用と両立させる工法を探るなどの再検討―などを促している。

 要望書は6団体に加え、被爆遺構に関わる市民団体や専門家の計11者の連名。各団体の代表たち7人が市役所を訪れ、県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)が松嶋博孝・市文化スポーツ部長に文書を手渡した。

 続く協議では、これまで市が「遺構の残存状況は良くない」と説明してきたことへの疑問が続出。「極めて良好」と逆の見方を示す専門家などの評価を十分に踏まえて対応を決めるよう求めた。松嶋部長は「スタジアム建設と戦前の広島の姿を伝えることの両立を図りたい」と説明。現在の市の案への理解を求めた。

 協議後、箕牧理事長代行は「市がさまざまな意見を聴かずに進めているのが一番の問題だ」と述べた。(水川恭輔)

(2021年8月25日朝刊掲載)

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