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渋沢の生涯 紙芝居に 井原の住民グループ制作 孫発案のシナリオが基

 民話の語り部活動に取り組む井原市の住民たちのグループは、井原との縁が深い実業家渋沢栄一(1840~1931年)の生涯を伝える紙芝居を完成させた。メンバーの金川ちよ子さん(73)=西江原町=と親交のある渋沢の孫から寄せられたシナリオを基に制作。金川さんたちは地元で紙芝居を読み聞かせ、子どもたちに郷土愛を高めてもらおうと意気込む。(高木潤)

 紙芝居制作は金川さんと、渋沢の孫でエッセイストの鮫島純子さん(98)=東京=の交流がきっかけ。金川さんは2012年、鮫島さんの講演を聴いてファンレターを送ると、鮫島さんから東京に招かれ、次第に2人で旅を楽しむ仲になった。昨年9月、金川さんが語り部活動の一環で、鮫島さんに渋沢を題材にしたシナリオ作りについて相談した。

 翌月、鮫島さんから便箋10枚が届き、渋沢の青年期の活躍や、孫としての思い出がびっしりと手書きされていた。金川さんは語り部活動の仲間たち十数人に紙芝居の制作を呼び掛けた。市内のイラスト作家に絵を担当してもらい、鮫島さんの記憶や意見とも擦り合わせて仕上げた。

 紙芝居「渋沢栄一物語」はB4判のイラスト14枚で構成。鮫島さんが「私のお祖父(じい)さまは渋沢栄一という人なの」と語り掛けるように始まる。青年の渋沢が、幕末に一橋家家臣として同家所領の井原で農兵募集をした逸話が序盤に登場。興譲館初代館長で漢学者の阪谷朗廬(ろうろ)と校門前で親しむ光景を再現した。終盤では、日米の子どもに人形を贈り合う親善活動で、鮫島さんが渋沢と式典に臨んだ思い出も紹介。報道カメラのフラッシュに驚く5歳の鮫島さんが描かれている。

 紙芝居は150部制作。ほぼ同じ内容をまとめたA4判の冊子も700部刷った。メンバーは21日、井原駅ビルに集まり、仲間内で紙芝居の読み聞かせを披露。市内の学校や図書館、公民館のほか、鮫島さんにも紙芝居などを送った。電話で報告を受けた鮫島さんは「団結とご努力に頭が下がります」と感謝した。

 メンバーは来月にも市内の小学校などで紙芝居の読み聞かせ会を開く。金川さんは「子どもには少し難しいかもしれないが、渋沢と井原のつながりを身近に感じてもらいたい。渋沢のような大人に育ってほしい」と願う。

(2021年8月25日朝刊掲載)

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