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原爆症の積極認定を検討 安倍首相、きょう表明で調整 新基準の運用改善

 原爆症の認定制度について、安倍晋三首相が「原爆の日」の6日、積極認定を目指して検討する意向を表明する方向で最終調整していることが、5日分かった。2008年に認定要件が緩和された後も却下が相次ぐ。首相は、高齢化した被爆者の早期救済に向け、緩和された新基準の運用を見直す構えだ。

 複数の自民党関係者が明らかにした。被爆者の早期救済については、同党国会議員でつくる議員連盟が、爆心から3・5キロ以内で被爆した人が白血病やがんを発症した場合、全員を救済▽入市被爆者は、甲状腺機能低下症などのがん以外の病気も積極認定―などを提案している。

 一方、新基準後も却下が続いているのを受け、民主党政権は10年、厚生労働省に「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を設置。新制度案などについて、今も日本被団協の委員と他の委員との間で意見が平行線をたどっている。

 首相は、議連の提案や検討会の議論内容を踏まえた上で、現行の新基準の運用改善を目指すとみられる。

 原爆症の認定要件は、全国の集団提訴で敗訴を重ねた国が08年4月に大幅に緩和。爆心地から3・5キロ以内で被爆し、がんや肝機能障害などの病気になった場合、積極的に認定する新基準が導入された。緩和は安倍首相が07年8月、被爆者と懇談した際に制度の「見直し検討」を表明したことがきっかけとなった。

 しかし、その後も却下は相次ぎ、緩和後、ことし3月末までの5年間で却下されたのは申請件数の半数近い9878件に上る。

 厚労省は、原爆放射線と病気との因果関係などを却下理由に挙げるが、大阪地裁は今月2日、新基準で却下された8人を原爆症と認め、処分を取り消す判決を出している。(城戸収、藤村潤平)

原爆症認定制度
 被爆者援護法に基づき、病気と原爆放射線との関連(放射線起因性)などを専門家が審査し、厚生労働相が原爆症と認定する。日本被団協が主導した認定の却下処分取り消しなどを求めた集団訴訟で、国側は相次ぎ敗訴。こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2008年4月、条件を大幅に緩和した。爆心地から3・5キロ以内で被爆▽原爆投下から100時間以内に爆心地から2キロ以内に入市―などの条件に当てはまる七つの病気を積極認定。それ以外は総合判断で認定している。

(2013年8月6日朝刊掲載)

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