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二つのヒバク地 記憶写す 広島で2人展 

 広島の被爆建物などを撮り続ける写真家土田ヒロミさん(73)=東京都=と、原爆ドームを背景に肖像を撮影している写真家宮角孝雄さん(65)=同=が、広島市中区のギャラリーてんぐスクエアで2人展を開いている。タイトルは「ヒロシマ、そしてフクシマ」。二つのヒバク地の記憶とメッセージを、写真や映像を通して語り掛ける。

 土田さんは東日本大震災後、15回福島を訪れた。今回出展しているのは写真ではなく、ことし4~6月に撮影した映像だ。「街」「森」「野」と題した3作品が、テレビ画面に流れる。福島第1原発事故で人けの消えた商店街、新緑の先で続く除染作業、当てもなく草むらを歩く牛たち…。淡々と、のどかさすら感じる風景にフクシマの癒えない傷が浮かぶ。

 「私がどう動き、何を見つめたのか。映像は被災地と私、鑑賞する人をより深くつなぎ留めてくれると思う」。被爆地広島の姿を30年以上追ってきた土田さん。「復興は街の再生だけではない。土地の文化、人々の精神性がどう取り戻されていくか。福島でも捉え続けたい」と話す。

 宮角さんは写真約20点を展示している。原爆ドーム前での撮影は2000年から。目を閉じて祈る被爆者、握手を交わすイスラエルとパレスチナの女性…。被爆地長崎や米中枢同時テロが起きたニューヨークで撮ったカットもある。人々の物静かな表情の向こうに、いさかいが生む悲劇と罪が見据えられている。

 庄原市出身の宮角さんは被爆2世。父と祖父が現在のJR広島駅で被爆したという。「負の記憶を胸にしっかり刻んでこそ、未来は紡げるのではないか」と問い掛ける。

 2人展は広島市内の美術館3館による合同企画展「アート・アーチ・ひろしま2013」のサテライト展示で、12日まで。土田さんは福島第1原発周辺の集落や森の四季を撮影した写真展も市内3カ所で順次開いている。(林淳一郎)

<ギャラリーてんぐスクエアでのサテライト展示>

■「後藤靖香・小西紀行・戸川幸一郎展 家族の肖像―親密性の美学」(15日~9月2日)
■「今を生きる―新生加奈・山浦めぐみ」(9月5~23日)
■「岡部昌生・柴川敏之展 未来の考古学」(9月26日~10月14日)

<土田ヒロミ写真展>

■「フクシマの唄」(13日まで、中区の旧日本銀行広島支店)
■「フクシマの村」(6~11日、中区のギャラリーNSA)
■「フクシマの森」(同、中区のギャラリーG)

(2013年8月6日朝刊掲載)

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