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サカスタ予定地の旧陸軍遺構 移設方針 再検討せず 市、きょうにも作業開始

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)で出土した旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構を巡り、市は2日、遺構の一部を切り取って移設する方針の再検討などを求めていた被爆者6団体や市民団体に対し、再検討はせずに、3日にも切り取りの作業をする考えを示した。

 厩舎(きゅうしゃ)の遺構の一部など3カ所(計23平方メートル)を移設する市の方針に対し、6団体などは保存活用が不十分だとして再検討するよう要望していた。この日、市の担当者が市役所で各団体の代表者たち6人に面会。「市文化財審議会(10人)の知見・評価を踏まえた」と説明し、市の方針に理解を求めた。

 要望団体側は、審議会で唯一の埋蔵文化財に関する委員で市方針を了承していない野島永・広島大大学院教授への聞き取り結果を説明。野島氏は今回の遺構は「国史跡級」だとの意見を市に伝えたとし、切り取り作業を見合わせて現地保存や移設範囲の大幅拡大など国の指定文化財級の評価に見合った保護策の検討を迫った。

 市は野島氏から指摘されたことは認めた一方、杉山朗市民局長は「手順を踏んで進めてきた」と、切り取りを始める考えを示した。要望団体の一つ、県原水禁の金子哲夫代表委員は「遺構をきちんと評価し、市民や専門家に理解を得られるよう努めなければ禍根を残す」と述べた。(水川恭輔)

(2021年9月3日朝刊掲載)

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