×

ニュース

被爆遺構 切り取り開始 石畳など計23平方メートル移設へ 広島のサカスタ予定地

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)で出土した旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊」施設の被爆遺構で、広島市は4日、一部を移設するための切り取り作業を始めた。戦前の「軍都」の姿を伝えるために活用する。

 調査している約6千平方メートルのうち、軍馬の手入れ場の石畳12枚▽厩舎(きゅうしゃ)の入り口の石畳25枚▽厩舎のアスファルトの床の一部―の3カ所計23平方メートルを移設する。この日はまず、作業員が1枚ずつ石畳を外して泥を落とし、クレーンでつり上げた。

 市文化スポーツ部は「輸送の中心的な役割を果たした軍馬の飼育の歴史が想起できる部分を選んだ」と説明。近くの仮収蔵庫で保管し、中央公園内を候補の一つに移設場所を検討する。

 発掘調査は市がスタジアム建設で掘り起こす地中の現状を記録するために昨年10月に始め、来年3月まで続く予定。今後、輜重隊の遺構の下にある江戸期の地層を調べる。調査エリアに残る遺構は近く撤去し、被爆した石材を含めて廃棄する方針。

 広島の被爆者6団体などは遺構の保存活用が不十分だと訴え、現地保存や移設範囲の大幅拡大などの検討を市に要望してきた。この日は要望団体の被爆者や市民ら約10人がフェンス越しに作業を見守り、「遺構が泣いている!」と記した紙を掲げた。(水川恭輔)

(2021年9月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ