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「核廃絶への交渉」求める 平和市長会議がヒロシマアピール採択 広島

 広島市中区の広島国際会議場で開催中の平和市長会議の総会は5日、2020年までの核兵器廃絶に向け、「核兵器禁止条約の早期締結のため、国連と全ての国に具体的交渉の開始を求める」とする共同声明「ヒロシマアピール」を採択した。参加者は6日の平和記念式典に参列し、全日程を終える。(岡田浩平)

 役員都市の市長たちがアピールを起草。会長の松井一実広島市長が読み上げ、拍手多数で採択された。

 アピールは、国際社会で核兵器の非人道性に焦点を当て、非合法化を求める動きが活発化していると指摘。核兵器禁止条約の締結を最大の目標に掲げた。世界の為政者には広島、長崎の被爆2市を訪れるよう求めた。

 国レベルでスタンスが異なる原発にも触れ「放射線の発生源のいかんを問わず、いかなる場所でも『ヒバクシャ』を出さないよう全力を尽くさなければならない」と訴えた。

 原発をめぐっては、この日の国内加盟都市の会議でも議論。原発がテロの標的にされた場合の危険性を指摘する意見も出た。

 松井市長は閉会式のあいさつで「今後の取り組みの方向性が見えた。一人でも多くの市民の支援を得て核兵器廃絶を実現しよう」と呼び掛けた。

 総会には最終的に、18カ国157都市や非政府組織(NGO)の代表たち305人が参加。次回は4年後の17年に長崎市である。

【解説】行動重ね組織力高めよ

 5712都市が加盟する巨大組織となった平和市長会議は、運営体制の強化が喫緊の課題だった。広島市で5日まで開かれた総会で「リーダー都市」の新設など具体策を決めたのは前進だ。2020年までの核兵器廃絶へ加盟都市一つ一つが行動を重ね、組織力を高める必要がある。

 役員都市への根回しもあり、「3段構え」の行動計画は総会で異論なく認められた。リーダー都市を中核とした地域グループ化を進め体制を固める▽さまざまな分野の団体、個人とネットワークをつくり、廃絶への声を上げる▽核兵器禁止条約の締結を粘り強く各国政府に働き掛ける―。手堅い内容だ。

 裏を返せば、目新しさを欠く。核兵器禁止条約の推進に妙策は見つからない。国際社会を動かすには、各都市が地道に市民の理解、協力を求める他ない。「数」を真の「力」へと換えることができるかが問われる。

 ヒロシマアピールの起草委員会は福島第1原発事故に触れるかどうかで紛糾した。放射線被害を指摘しながら「フクシマ」という文字を入れることを拒む都市もあり、最終的に削除された。加盟都市数が増える分、考え方の違いも増える。

 核兵器廃絶に向けて都市を束ね、引っ張っていく力が会長都市広島には求められる。(岡田浩平)

(2013年8月6日朝刊掲載)

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