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核兵器廃絶へ思い新た 赤十字国際委のサビオ駐日代表 広島訪問 被爆者の切明さんと交流

 赤十字国際委員会(ICRC)のレジス・サビオ駐日代表(54)が6日、広島市を訪れ、被爆者の切明(きりあけ)千枝子さん(91)=安佐南区=と交流した。市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を一緒に訪れ、救護所となった建物の惨状などを聞いた。紛争解決や平和構築を進めるICRCの国内トップとして核兵器廃絶への思いを新たにした。(明知隼二)

 サビオ代表は、爆風でゆがんだ鉄扉が残る被服支廠を切明さんと見学後、中区のカフェで対話。けが人の収容所となり山積みの遺体が焼かれた被服支廠の様子や川面を覆い尽くした遺体、混乱の中で母親と引き離された子どもなど、被爆後の惨状を語る切明さんの言葉に、帰京時間を約1時間半遅らせて聞き入った。

 切明さんは、1945年9月に医薬品約15トンを広島に持ち込んだ当時のICRC駐日主席代表、マルセル・ジュノー博士にも言及。切明さんはその頃、脱毛や下血など放射線の急性症状が現れて寝込んでおり、母親が「外国人が薬をくれる」との情報を基に入手した薬を飲ませてくれたという。「あれはジュノー博士の薬だったのではないでしょうか」と振り返った。

 サビオ代表は、核兵器禁止条約が発効する一方、国際情勢の悪化で核兵器が使われるリスクが高まっていると指摘。「戦争で苦しむ人を減らすことがICRCの原点。切明さんの話を聞けば核兵器は持つべきではないと分かる」と話した。

 サビオ代表は客員教授を務める広島大(東広島市)での講義に合わせて広島市を訪れ、松井一実市長とも面会。核兵器廃絶に向けた連携を確認した。

(2021年9月7日朝刊掲載)

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