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首相あいさつ、原子力政策に触れず 被爆68年式典

 2011年3月の福島第1原発事故から、3回目となる「原爆の日」。広島市の平和記念式典で、原子力政策をめぐる発言が消えた。

 民主党政権時代の11年、菅直人首相は「原発に依存しない社会を目指していく」と誓った。原発の「安全神話」も反省した。12年の野田佳彦首相は「脱原発依存の基本方針の下、中長期的に国民が安心できるエネルギー構成の確立を目指す」と述べた。

 あれから1年。参院選で大勝した安倍晋三首相は、原発再稼働に道筋を付ける意欲を見せる。5月には核拡散防止条約(NPT)に加盟していない核保有国インドに原発を輸出する交渉を始めた。だが、この日の式典で原子力政策について一切言及しなかった。

 菅義偉官房長官はこの日の記者会見で理由を問われ、「核兵器のない世界の実現に取り組んでいく姿勢は変わらない」と述べるにとどまった。

 松井一実市長は平和宣言で「国民の暮らしと安全を最優先にした責任あるエネルギー政策を早期に構築し、実行することを求める」と述べるにとどめた。一方で、インドとの原子力協定締結に突き進む政府への懸念を「核兵器廃絶の障害になりかねない」とした。

(2013年8月7日朝刊掲載)

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