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岸田氏 地方発信に力 11社記者に自ら持ち掛け質疑応答 「防災」や「創生」 意気込み

 自民党総裁選は、国会議員票と同数の383票が割り当てられた全国の党員・党友票が鍵を握る。相次ぐ災害への備えや活性化など地域社会が抱える課題をどう捉え、どんな処方箋を示すのか。その発信に、一番乗りで立候補表明した岸田文雄前政調会長(広島1区)は力を入れる。地方紙の合同インタビューも自ら持ち掛けて実現させた。(下久保聖司)

 9日夕、財務省で麻生太郎副総理兼財務相との会談を終えると、車に飛び乗り国会記者会館へ。「まずは水を」。一息つくと、中国新聞など11社の取材に約1時間半を割いて答えた。

 防災を巡っては危険地域からの集団移転の必要性にも触れ、「協力していただく場合には適切な補償を用意しなければ」と強調。農政などでも熱弁を振るう中、地方対策の本気度を問う質問が出た。昨秋まで約3年務めた政調会長時代に進まなかった地方創生が、総裁になったら進むのか―。

 岸田氏は新型コロナウイルスの感染拡大でオンライン会議などが定着し、テレワークで都市部に住まなくても仕事ができるようになったと指摘。「種をまいた。結果につながるよう努力する」と意気込んだ。

 地方重視は昨秋の総裁選の苦い経験に基づく。コロナ禍で党員・党友投票が見送られた。都道府県連に3票ずつが割り当てられた地方票(141票)の獲得はわずか10票。知名度向上を目指して、地方浸透にとりわけ力を入れ、視察や意見交換を重ねてきた。

 菅政権が掲げた2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」については評価、踏襲する考えを示した。その上で「自動車整備業の経営者から『ガソリン車が消えたら仕事がなくなる』という声を聞く。現実と理想のマッチングに向き合わねば」と訴えた。

 原発政策も立地地域で関心が高い。岸田氏は「原子力についてはまずは既存施設は再稼働を目指す」とし、「クリーンエネルギーの一つのプレーヤーとして原子力は引き続き維持していかなければならない」と訴えた。

岸田氏合同インタビュー 一問一答

処理水放出 丁寧に説明

核禁止条約 米と一緒に

 記者クラブ「国会11社連合」合同インタビューの岸田氏の主な発言は次の通り。かっこ内は質問した地方紙。

◆コロナ禍による需要減で米価が下落。どんな対策を講じますか(新潟日報)
 輸出促進や需要回復への支援に予算を確保しなければならない。

◆東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出をどう考えますか(河北新報)
 風評被害対策とともに関係者への丁寧な説明を続け、理解を得ながら放出するのが進むべき道だ。
◆日本維新の会と自民党の関係をどう考えますか(神戸新聞)
 個々の政策ごとに是々非々で議論、対応する状況だ。衆院選後の連携は今の段階で全く考えていない。

◆人口減が進む高知、徳島両県は参院選で合区が導入されました。このままでは衆参の議席は都市部に集中します。どのように対応しますか(高知新聞)
 人口という物差しだけでなく、地域の歴史や一体感など、それ以外の物差しを憲法に設けなければならない。

◆米軍機による陸上空母離着陸訓練の移転候補地の鹿児島県・馬毛島で住民の賛否が割れています(南日本新聞)
 地元で分断が起きているのは残念だ。丁寧な対話を続ける。

◆被爆地広島選出の議員としてバイデン米大統領とどう向き合いますか(中国新聞)
 米国を核兵器禁止条約に一緒に連れていく努力をするのが被爆国の責任だ。

(2021年9月12日朝刊掲載)

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