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「桐生織づる」 祈り運んで 伝統織物で制作 群馬から幟町小へ 少女呼び掛け 官民が協力

 群馬県桐生市で、伝統織物「桐生織」で作った幅1・2メートルの大きな折り鶴を広島へ届けるプロジェクトが官民挙げて盛り上がっている。一人の少女の呼びかけがきっかけだ。佐々木禎子さんの母校の幟町小(広島市中区)に来月贈る。(桑島美帆)

 「織づる」と名付けられ、薄ピンクの生地に桐生市周辺に生息するカッコソウがあしらわれている。発案者は同市中央中1年の園田莉菜さん(12)。小学6年だった昨秋、母奈緒さん(47)と初めて訪れた広島で原爆の子の像の由来を知り、「同い年の禎子さんがあんな悲惨な目に遭ったなんて…」と心を痛めた。

 「桐生織で折り鶴を作り、平和の象徴にしたい」。今年2月、学校の課題で書いた作文を奈緒さんが会員制交流サイト(SNS)に投稿。地元の遺族会の小池恵一会長(89)とつながった。遺族会が動き始めると共感の輪が広がっていった。地元企業が生地に張りを出す加工作業などで協力し、計6羽を制作した。

 桐生市一帯は戦争中の空襲被害を受けていないが、約3100人が戦地で亡くなっている。小池会長の父新恵さんもフィリピンから戻らず「白木の箱の中には、おやじの名が書かれた紙1枚しかなかった」。長く口を閉ざしてきたが、莉菜さんに心を動かされ、初めて人前で体験を語った。

 7月下旬、同市の担当者が広島市へ「織づる」の寄贈を申し出たところ、大きさなどを理由に断られた。そこで、禎子さんの同級生の川野登美子さん(79)=中区=たちを通じて幟町小へ打診。「思いを受け止め、子どもたちに伝えていく」と藤川照彦校長(58)から快諾を得た。

 広島市には、桐生市庁舎ロビーなどで市民に呼び掛けて集めた折り鶴約6100羽の一部を贈る。園田さんは「周りに支えられて実現できた。平和の大切さをつないでいきたい」と話している。

(2021年9月12日朝刊掲載)

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