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連載・特集

緑地帯 樋口明雄 東京卒業 <5>

 「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」といった特撮番組が楽しみだった。ひとりっ子ゆえチャンネル争いもなく、日曜日の晩にはテレビの前に座って、食い入るように番組を見ていた。

 70年代になると、「仮面ライダー」が始まった。巨大化して怪獣と戦う主人公ではなく、等身大のヒーローだったから身近に感じられたのだろう。邪悪な組織に捕まって改造人間にされつつも、良心だけを残した主人公が、哀しみのようなものを背負って、独り戦い続けるところが格好良く思えた。

 そんな特撮ヒーロードラマから心が離れていったのは、主人公が集団化していったためだ。ウルトラマンも仮面ライダーも、過去に終わった前シリーズの主役たちがふたたび集まって兄弟となり、あるいは仲間となって戦力を強化していく。やがて「秘密戦隊ゴレンジャー」に始まる戦隊シリーズが始まり、ヒーローやヒロインが集団的存在で敵と戦うようになる。

 なぜそうなったかといえば、スポンサーである玩具メーカーの思惑のためだと推測する。ひとりのヒーローだと売れる玩具はひとつ、それが5人になれば単純に5倍の売れ行きとなる。

 しかしどんどん増殖して数を増やしたヒーローがチームを組んで悪を退治するという構図はいかがなものか。そんなふうに幼い頃にテレビ番組で得た原体験が同調圧力を生み出したり、個性を排除する風潮をつくってはいないだろうか。

 正義の味方は孤独であるべきだった。今でもそう思っている。(小説家=山梨県北杜市)

(2019年5月18日朝刊掲載)

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