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連載・特集

緑地帯 「聖地都市」考 杉本俊多 <1>

 西洋近代建築史の研究をしつつ、都市像の行く末を考え続けてきた。そして、足元の平和記念都市広島の50年後、100年後を思案してきた。さらに都市化が進んで米ニューヨーク、あるいはアラブ首長国連邦・ドバイのような超高層街になるのか。パリのように整然とした歴史都市になるのか。あるいはまた、他に例のないような独自の姿を見せるのか。

 世界に核兵器の恐ろしさを訴え続ける平和都市としての重い立場は変わらないだろう。けれども直接の被爆体験者はいずれおられなくなり、次の世代への交代とともに、発信力が質的に変化することは不可避である。

 ふと、思い浮かぶのが歴史的な聖地都市の姿である。世界にはさまざまな宗教があり、それぞれに聖地がある。開祖、創始者はいなくなっても、聖地という物理的な存在が時を超えてその精神を継承させてきた。聖地には記念建築物が建ち、都市整備がなされ、巡礼者を集めてきた。

 広島・長崎の被爆は人類史に記される歴史的悲劇であり、両都市は世界中から多くの来訪者を永く受け入れ続けることとなろう。いわば20世紀に始まる「聖地都市」として広島は、どんな姿をまとうのか、これからどのようにデザインされていくべきなのか。

 例えばローマ市は聖地都市の一例だが、同時に観光地、また現代文化を先導するグローバルシティーでもある。そのような都市を参考にして考えてみたい。(すぎもと・としまさ 広島大名誉教授=東広島市)

(2018年6月23日朝刊掲載)

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