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連載・特集

緑地帯 「聖地都市」考 杉本俊多 <6>

 イタリア・ルネサンスの理想都市計画では、きれいな多角形や碁盤目の街路網が用いられた。実は、16世紀末に碁盤目の明快な新都市計画案から始まった近世城下町広島も、そのような理想都市計画に似ているところがある。

 しかし、そこは当初から古代型の神社、中世型の仏教寺院を吸収していて、歴史的に多様な都市文化が混ざっていた。城下町以前の漁村集落の都市遺伝子も伴っていたようである。それは明治維新で近代都市へと改編され、さらに戦後復興計画で改めて再編がなされたが、よく見ると各時代の都市遺伝子が混じる混成系というべき空間システムとなっている。

 地球環境保全の問題から「サスティナブル(持続可能)な開発」が唱えられ、「持続する都市」が新しいテーマとして立ち上がっている。その背景には、20世紀の理想都市計画だった「モダニズム都市」は持続しづらいという批判がある。

 そこではまず、ばら色の未来都市を描くのでなく、これまで何が持続してきているのかを見直すことが求められる。未来像はピュアではなく、雑多なものの寄せ集めであり、それこそが生命感のある都市となるのである。

 そこで私は、既に集積した多様な都市遺伝子を上手に活(い)かす「混成系の都市」というものを唱えている。再統一後のベルリンでは、世界の資本が集まって大建設ブームが続いていた。街の各所で同時多発的に再開発が始まり、混成系の都市のあり方が見られた。これは新しい広島の見方につながるはずだと思った。(広島大名誉教授=東広島市)

(2018年6月30日朝刊掲載)

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