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連載・特集

緑地帯 梟の眼と愛 出原均 <3>

 「画廊梟(ふくろう)」は、ひろしま国際ホテル(広島市中区立町)の東境の路地にあった。通称のなめくじ横丁は、志條みよ子さんの小説「現身(うつそみ)」(「女人文藝」第1号)に出てくるなめくじ小路に由来する。その名が示すように、戦後のバラックの雰囲気が残る盛り場であった。私は閉廊までに訪ねることはできなかったが、写真や記事、志條さんの話などからその空間の再現を試みよう。

 画廊梟の建物は3階建てで、1、2階が展示場、3階は事務所兼倉庫である。敷地は5・5坪、約18平方メートルなので、幅3メートルとして奥行き6メートルでしかない。実際は部屋の奥の階段周りや壁自体の厚みなどを除くので、もっと狭い。各階6畳程度だったという。

 それぞれの部屋の狭さは否めず、展示する絵は小品が基本となる。眺める距離を考慮するなら、30号(標準で91×72・7センチ)までがよい

と志條さんも著書に記している。記録を見ると、展示は20点前後が一般的である。  特に1階は、建物左手の扉を開けて入ると、全体が一望の下である。来客を徐々に作家の世界に引き込むような余裕はない。難しい空間だが、工夫次第では面白い展示ができただろう。志條さんは画廊主として、作家に点数や展示について自分の意見をはっきり述べたそうだ。

 アートギャラリーミヤウチ(廿日市市)の今回の展覧会で、そのおよその広さを実感していただくため、展示室の床に白いテープで3×6メートルを囲った。この中で美術のドラマが繰り広げられていたことを思い浮かべてほしい。(兵庫県立美術館学芸員=神戸市)

(2018年4月20日朝刊掲載)

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