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連載・特集

緑地帯 梟の眼と愛 出原均 <5>

 「画廊梟(ふくろう)」で開かれた二百数十の展覧会は、おおよそ三つに分けることができる。地元画家の中でも大家、中堅の展覧会。次いで、若い画家の展覧会。さらに、テーマを設定したグループ展である。

 若手の展覧会を積極的に開催したことは特筆に値する。彼らが画廊梟で最初に個展や2人展を行った年齢を調べると、ほとんど20代である。画廊主、志條みよ子さんよりも10歳以上若い。

 志條さんの眼(め)にかなったのが、入野忠芳、久保俊寛、田谷行平、田部健三、殿敷侃、西谷勝輝、藪野圭一である。志條さんは個展を繰り返し開催し、成長過程を見届けようとしたらしい。描写の達者な田谷や西谷、ヒロシマが根底にある入野や殿敷に加え、ポップなセンスの田部がいたのが興味深い。志條さんの懐の広さである。

 画廊の歴史約20年のうち、新人の発掘は前半にほぼ集中する。それでも、後半に大上典男や槙原慶喜、まつだなるが登場した。1986年の最初の展覧会は画廊梟の最後の展覧会だが、それをまつだの個展にしたのは象徴的な締めだった。まつだの48歳での早世(2005年)は惜しまれるが、志條さんは若手の将来に希望を託したのではないか。

 若い画家の絵は売りやすいものではなかっただろう。しかし、志條さんにとっては最もスリリングで、最も重要な営みであったに違いない。自分の眼力を問うことになったからである。見ることが創造になる可能性がここにあった。彼らの多くが戦後広島の美術の中で独自の位置を得たことは、歴史が徐々に証明してきた。(兵庫県立美術館学芸員=神戸市)

(2018年4月24日朝刊掲載)

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