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連載・特集

緑地帯 梟の眼と愛 出原均 <6>

 「画廊梟(ふくろう)」が開いた展覧会の記録に目を通すと、開廊して10年目の1975年から展覧会の数の減少が顕著である。60年代は二十数回、70年代に入ると十数回開催したが、その半ばからは10回に満たない。一心に画廊を切り盛りした時期が終わり、少し力を抜いた経営に移行したらしい。

 これと関係するのだろうか、77年から作家の個展や2人展の数が減り、その分、テーマを設けたグループ展が増えている。「わが町」「貌(かお)展」「花の絵」といった内容によるものも、ミニアチュールやペン画といった形式、手法によるものもある。多くはシリーズ化され、花の絵なら春、小品展なら歳末と時期も定例化した。

 何人かの画家に伺うと、こうしたテーマ展に合わせた絵を画廊主の志條みよ子さんから要請されたという。さまざまな絵が奏でるハーモニーが小部屋を満たし、豊かな世界を広げたことだろう。組み合わせの面白さである。テーマ展のダイレクトメールに、志條さんはイメージを膨らませる文や、詩のような文を載せた。例えば、

 …花は滅びてのち美しさとなる/人は死んでのち真の存在となる/詩は全ての物の終わりであり始めである/芸術とはその終始に参ずるための一つの道である/そして―(「花の絵」1982年)

 …明日は 知れぬのに 今この眼前の闇を見つめようとしないし 空の青さを惜しまない/何がいちばん哀れといって 人間の貌ほど 悲しいものはない…(貌展 1982年)

 志條さんがテーマ展を楽しんでいたことがうかがえる。(兵庫県立美術館学芸員=神戸市)

(2018年4月25日朝刊掲載)

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