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連載・特集

緑地帯 梟の眼と愛 出原均 <8>

 志條みよ子さんが残した絵は200点余り。そのコレクションに触れた文章は、必ずしも多くない。広島市街にあった住まいには、青山二郎、斎藤与里、野村守夫、福井芳郎、灰谷正夫の絵が掛かっていたという。

 佐伯区杉並台に移ってからの随筆にはこうある。「感心するのも速いけれど飽きるのも速いので次つぎ手放してしまう。山里へ移ってからは殆ど売り食いなので残ってゆくのは由緒ある想い出がらみの品物だけである」(「愉(たの)しい日」)。青山の絵は「酒場梟(ふくろう)」の頃に入手したことが分かっている。求めて入手したものもあるが、多くは「画廊梟」での展示が縁で手元に置いたものだっただろう。

 収集家なら自分の審美眼を第一とするが、画廊のコレクションはさまざまな作家との交流や、画廊の歴史が大きく関係する。そうした複雑な織物であることこそ興味深い。アートギャラリーミヤウチ(廿日市市)で開催中の展覧会で、さらにその歴史や物語が明らかになることを期待している。出展点数はコレクションの半数に満たないが、判明している画家の絵はできる限り出し、複数の絵がある画家は出品作を厳選した。

 展示構成に当たり、志條さんの眼を少し意識した。画家に展示について意見を述べていた志條さんである。今回の展示をどのように見ただろうか。また、来館者の方には、どれが自分の欲しい絵か、考えながら見ることをお勧めする。作品を買うことは自己表現だと語っていた志條さんが、手元に残した作品だからである。(兵庫県立美術館学芸員=神戸市)=おわり

(2018年4月27日朝刊掲載)

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