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連載・特集

緑地帯 麗しのキューバ 佐藤美由紀 <1>

 「広島・キューバ展」が広島市で開かれている。やっと、ついに、などと思ったりもしているのだが、昨年の秋ごろからキューバ(ブーム)が来そうで、来ない。

 2016年9月、安倍晋三氏が日本の首相として初めてキューバを訪問し、同国の紹介映像を流すニュース番組も少なくなかった。ネット通販で買おうとしていた堀田善衛著「キューバ紀行」を、私は思い出した。1966年出版の古本。1円で売りに出ていたが、いざ買おうと見直すと、4200円につり上がっていた。

 やはりキューバが来つつある、と私は感じた。「これでカストロ(前国家評議会議長)が亡くなったりしたら、すごいことになる」と半ば本気で思っていたし、周囲に公言もしていた。すると、11月25日、本当にカストロが亡くなった。驚いた。カープではないが、自分のことを「神ってる?」と思ったほどだった。

 だが、それでもブームのうねりはやっては来なかった。そうこうしているうちに年が明け、3月になってワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まった。侍ジャパンが属するB組にキューバが入っていたせいで、またまたこの国に注目が集まった。「今度こそ」と私は期待した。

 その頃、私は本の執筆の準備を進めていた。取材でキューバを訪れる予定もあった。ビッグウェーブはやって来るのか。やきもきしつつ、5月、私はキューバへと旅立ったのだった。(さとう・みゆき ノンフィクションライター=東京都)

(2017年9月23日朝刊掲載)

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