×

連載・特集

緑地帯 麗しのキューバ 佐藤美由紀 <4>

 1961年以来、途絶えていたキューバとアメリカの国交は、2015年7月に回復した。16年からは両国を結ぶ定期便も飛んでいる。マイアミからなら1時間ちょっと、ニューヨークからでも2時間半もあれば着く。こんなにも近い、かつての〝禁断の島〟へ、アメリカ人はこぞって訪れる。

 ハバナの街はアメリカ人観光客であふれている。高級ホテルにはアメリカ人の団体が大型バスで乗り付ける。歓声、奇声を上げるアメリカ人の若者たちを乗せた、クラシカルなオープンカーのタクシーが通りを行き交う。少し前までなら考えられない光景だろう。

 「米帝国主義が行った悪は決して許されることではありません。ですが、政府と人は別物。アメリカ国民とは良好な関係を築いていけばいいんじゃないですか」。ある教育学の博士は言った。

 「アメリカのことは大好きよ。小さいときから、『アメリカ政府は悪い、ひどい』とテレビなどで聞かされたから、かえって興味が湧いた。私はキューバ人として、アメリカ人に興味がある。アメリカという国にも一度は行ってみたいな」。こう言ったのは、日本語ガイドとして働く23歳の女性だ。

 キューバ革命以来、アメリカは経済封鎖をはじめ、キューバに対して数々の〝嫌がらせ〟を行ってきた。それを思うと、私などは、ハバナの街で能天気にはしゃぐアメリカ人に疑問を覚えてしまったりもしたのだが、どうやら見当違いだったようだ…。キューバの人たちは、思った以上に柔軟かつ寛容なのかもしれない。(ノンフィクションライター=東京都)

(2017年9月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ