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連載・特集

緑地帯 麗しのキューバ 佐藤美由紀 <8>

 去る8月6日の夜、広島市内で思わぬ人に出くわした。広島県知事の湯崎英彦氏だ。邪魔をして申し訳ないと思わなくもなかったのだが、気がつくと私は「知事ですよね」と声を掛けていた。「はい、そうです」。嫌な顔ひとつせず、快く応対してくださった。

 拙著「ゲバラのHIROSHIMA」の執筆に当たり、県庁の方にも尽力していただいた。「このところ、ちょくちょくゲバラが話題になりますよね」と知事。さすがによくご存じだ。

 ボリビアでゲリラ戦を展開していたチェ・ゲバラは、1967年10月9日、政府軍に捕らえられて射殺された。今年は没後50年に当たる。それを記念して、ゲバラが撮影した写真の展覧会が催されるなど、知事の指摘通り、日本でもゲバラが話題になりつつある。

 今月、日本とキューバの合作映画「エルネスト」も公開される。ゲバラと共にボリビアで戦った日系ボリビア人医師フレディ前村の生涯を描いた作品だ。「エルネスト」とはゲバラの本名でもあるが、ボリビア戦線でゲバラがフレディ前村に与えた名前でもある。ちなみに映画は、ゲバラが広島を訪れるシーンから始まる。

 ブームが来そうで、なかなか来なかったキューバだが、ゲバラ効果もあって、今度こそ本当にやって来るのではないか。来たら何なんだ? という話だが、個人的にキューバには愛着がある。ブームになったら、ちょっとうれしいに違いない。そんなこんなで、今日も私は、遠いカリブの国に思いをはせている。(ノンフィクションライター=東京都)=おわり

(2017年10月4日朝刊掲載)

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