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連載・特集

『緑地帯』 地図に魅せられて 竹崎静嘉 <5>

 国土地理院刊行の地形図は緯度経度によって区切られ、隣接する地図と重複部分がない。したがって、必要な範囲が2枚、3枚へとまたがる場合がある。お客さまには何とも申し訳ない。

 平成14(2002)年4月には、測量の基準が日本測地系から世界標準の世界測地系に変わり、データの移行が順次行われた。

 地形図の原版は、古くは銅版を直接彫って作った。やがて写真製版技術が用いられるようになった。描画にはペンや烏口(からすぐち)で描く清絵(せいかい)技法があり、次に現れたのがスクライブ技法である。遮光膜を塗ったプラスチックベースに鋼針で彫って描く。これらのアナログ技術は、高度な技術を持った職人の手によるものであった。

 以前は、測量から刊行までには相当の時間を要した。新刊として発行された時には既に現状と合致しないこともあった。このため、例えば自動車道の開通に合わせて地形図を発行するなどの努力がされたこともあった。

 今のデジタルデータ化された地図は、印刷物として販売される地図よりも数倍の速さで更新される。より「今」に近い地図を、居ながらにしてパソコン画面で見ることができる。わざわざ地図屋に行って、あまり新しくもない地図を買わなくてもよい。紙地図の売れ行きは、最盛時の20分の1以下である。

 国土地理院のデータ改訂は迅速な対応が行われているが、出版物としての地形図は、1カ月に30~40面くらいが更新されている。全国に及ぶ範囲の改訂には15~20年の時間がかかりそうだ。(中国書店店主=広島市)

(2017年9月7日朝刊掲載)

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