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連載・特集

緑地帯 真宗学寮あまり風 岡本法治 <1>

 6月1日から5日間、真宗学寮(広島市西区)で創立記念講会(こうえ)が開かれ、今年で第112回を迎えた。1906(明治39)年、地方でも仏教、浄土真宗を学べる学校が欲しいという願いで創立され、今も学費は無料である。

 最初は今の原爆ドーム(中区)東隣の西向寺にあったが、26(大正15)年に現在の南観音の地に移った。移設から90年を過ぎるが、付近で「真宗学寮はどこですか」と尋ねても、ほとんどの人が知らないという不思議な学校である。

 この地に移る3年前、僧侶への道を開く本願寺認可の広島仏教学院が併設された。こちらは有料だが、他の学院よりも安いということもあり、北海道や鹿児島、海外ではフィリピン、韓国、中国からも学びにお越しくださった。学科は多岐にわたるが、特に真宗学を宗乗(しゅうじょう)と呼んでいる。

 学寮創設の際に皆から推され、初代学頭になられたのが高松悟峰和上(1866~1939年)である。その思い出を、井上哲雄(てつゆう)師が「高松悟峰和上語録」(洗心書房)に記しておられる。

 ある時、冗談半分で「宗乗ではオマンマ(ご飯)が食べてゆけそうにありませんね」と言ったら、「そんとうの事ぁ心配せんと宗乗をやって下さい。お金は私が御浄土から送って上げます」と言われた。どんな𠮟責(しっせき)を受けたよりも恥ずかしい気がしたという。

 学寮は、今も護持されている。題の「あまり風」とは、浄土から吹いている風である。(おかもと・ほうじ 真宗学寮教授=東広島市)

(2017年7月6日朝刊掲載)

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