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連載・特集

緑地帯 真宗学寮あまり風 岡本法治 <2>

 毎年6月と10月の初め、真宗学寮(広島市西区)では会読(かいどく)が行われる。問答を通して行う勉強方法である。

 問者と答者(たっしゃ)の2列に分かれ、一方は問い、一方は答える。今は問いと答えと一組ずつで交代することが多いが、昔は問えなくなると次に代わり、答えられなくなると代わるという真剣勝負であった。

 現在、会読を定期で行っているのは、京都の本願寺と大阪の行信教校、学寮の3カ所しかない。お同行(聴聞者)に囲まれて行っているのは、ここだけである。一見の価値はある。

 会読では論議を闘わせるので、論理的な思考の持ち主に有利なようであるが、そうとも限らない。昔から「腹で問い、腹で答えよ」といわれ、頭より腹の据わりを大切にするのである。

 問われて答えられないのは、頭で分かっていたつもりだったことに気がつく。会読ではよく「声に出せ」ともいう。今まで聞かせていただいた領解(りょうげ)(教えを聞き会得すること)が間違っていないか、互いに確認することでもある。

 また「十年で一難ころり」ともいう。10年間学んでようやく一つの問いに答えることができる、という意味だ。

 大事なのは、答えよりも問いである。問いが間違っていたら、答えてはならない。答えも間違ってしまうからである。

 例えば、「死んだらどこに行きますか」という問いに答える必要はない。「わたしが死んだらどこに行きますか」には、答えなくてはならない。それは、いのちの問いだからである。(真宗学寮教授=東広島市)

(2017年7月7日朝刊掲載)

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