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連載・特集

緑地帯 真宗学寮あまり風 岡本法治 <8>

 真宗学寮(広島市西区)にお世話になって、40年を過ぎる。大学受験に失敗し、行く当てもなく、祖父に広島仏教学院に放り込まれたのが始まりであった。

 たくさんの先生方にお世話になった。中でも藤澤桂珠和上には、会読(かいどく)で厳しくご指導いただいた。

 藤澤和上がご往生される前に、病院にお見舞いに伺った。すると「わしが死んだら葬式はせんでええから、ご法座を開いてくれ」とおっしゃった。忘れられない一言である。

 仏教が顕(あらわ)す真実とは何か。思えばそれが、入学して以来変わることのない課題であった。

 そして、今感じている。一切の権威に頭を下げずに、ただ仏のみを仰いで愚直に生きてゆくことであると。

 8月7日には学寮で、キリスト教・イスラム教・仏教の対話を予定している。牧師の川上直哉さん、日本人ムスリムのナセル永野さんを迎え、座談の司会は広島出身の歌手玉城ちはるさんである。

 川上さんは師から、こう教えられたという。「イエス・キリストは、教会にいません。最もつらい思いをしている人の所にいます。イエスに会いたければ、そこに行って話を聞きなさい」

 宗教がめざすものは何か。その輝きと危うさを語りあい、秘められている真理を発見する喜びをご一緒できたらありがたい。

 教えに遇(あ)えた慶(よろこ)びが、いのちからいのちに受け継がれ、学寮創設から110年を超える伝統となってきた。この道場は万人に開かれている。合掌(真宗学寮教授=東広島市)=おわり

(2017年7月15日朝刊掲載)

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