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復興初期のネガ960枚 菊池俊吉さん撮影 原爆資料館に提供

 被爆二カ月後の広島の惨状を記録した写真家、菊池俊吉さん(一九一六―九〇年)が、一九四七年八月下旬から九月末にかけ復興初期の被爆都市を撮ったネガフィルム九百六十枚が現存していた。東京都在住の妻徳子さん(83)が広島市の原爆資料館に寄せた。爆心地に近い旧商工会議所の屋上から収めた三百六十度のパノラマ写真のネガもすべて見つかった。

 廃虚からの再出発に挑む市民の暮らしぶりや、平和記念公園となる中島地区を中心に「平和都市」への建設に歩みだすデルタ一帯を克明に撮っている。世界的な反響を呼んだ米ジャーナリストのジョン・ハーシーのルポ「ヒロシマ」(四六年刊)に登場した被爆者も収めていた。呉や竹原の瀬戸内沿岸部、島しょ部などの光景も撮影し、ネガは計二千二百五十枚に上る。

 菊池さんは、旧文部省の原爆災害調査団と四五年十月に入り、被爆直後の実態を記録。さらに、広島県観光協会の委嘱で「瀬戸内海文庫」が製作した海外向け写真集「LIVING HIROSHIMA」(四九年刊)の撮影に当たった。

 四五年撮影のオリジナルプリント八百六十枚は、原爆資料館と中国新聞による「被爆地での調査と保存」の要請に応じて徳子さんが昨年三月に提供。今回寄せられたネガも撮影対象などを確かめ、広島国際文化財団(山本信子理事長)の助成を得て電子保存化する。(編集委員・西本雅実)

(2008年8月5日朝刊掲載)

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