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ヒロシマ発信へ継続課題 ピース・アーチ閉幕 集客苦戦の催しも

 被爆地からの平和発信を目的に広島県などの実行委員会が主催した「ピース・アーチ・ひろしま」の主要イベントが5日までに終わった。国内外のアーティストが参加したコンサートや経済界トップが集った経済人会議はほぼ目標動員数を達成。一方、コンサート会場の変更に伴い収益が減る可能性は高く、集客がふるわなかったイベントもあった。一過性のイベントに終わらせず、継続的な取り組みに生かせるかどうかが今後、問われる。(新本恭子)

 主要イベントは7月27日から今月5日までの10日間、広島市中区であった。柱であるワールド・ピース・コンサートには、8公演に33人と16団体が出演。客席は満席が続き、来場目標の1万6600人をほぼ達成した。

 国内外の経済界トップが平和への関わりを議論した7月30、31日の「国際平和のための世界経済人会議」。目標の千人を上回る1200人が聴講した。

 一方、ハノーバー庭園などで7月27日から今月3日まで、NPO法人などが平和活動を紹介したり、各国の料理を出店したりしたピースフィールドは26万人の目標に対し15万人と苦しんだ。PR不足や猛暑が影響した。

 ピース・アーチ・ひろしまは、被爆地広島の果たすべき役割を示す「国際平和拠点ひろしま構想」の一環。2011年度から3年間で事業費は9億8100万円。県は6500万円を負担した。協賛金や放映権料、事業収入で11億5500万円の収入を見込み、1億7400万円の収益を上げる予定でいた。

 ただ、コンサートで音質を追求して会場を客席数が少ないホールに変えるなどしたためチケット売り上げが減少。入会費500円の個人会員ピースサポーターも現在約2万3千人で、目標10万人を下回る。収益は予定より減る可能性が大きい。

 収益は、国連などで活躍できる人材の育成▽大規模災害時の復旧▽核兵器廃絶に向けた研究―などに取り組む団体への助成資金にする。イベントと共に、事業の軸となる。

 結果として主要イベントの関連性は分かりにくかったが、「世界的に著名な音楽家が集えたのは広島だからこそ」(50代女性)と好意的な声も多かった。それだけに収益の助成先を含め、被爆地広島の発信にどう生かされたのか、県民に示していく必要がある。

ワールドコンサート 音楽の力 高い評価

 被爆地広島市で8公演を重ねたワールド・ピース・コンサート。「世界への発信力」や「平和への思い」を踏まえて招いた国内外のアーティストのステージは、地元の音楽関係者の間でも評価が高かった。ポップス、ロック、ジャズ、クラシックなど多彩なジャンルで「音楽の力」を感じさせた。

 クインシー・ジョーンズはグラミー賞受賞歴のある大物歌手に加え、さまざまな国籍の若手を率い「世界は一つ」と印象づけた。俳優吉永小百合の詩の朗読と坂本龍一のピアノは重く張り裂けそうな祈りで会場を包んだ。

 アジア・フィルハーモニー管弦楽団はアジアの一体感を鮮やかに表現。人気ピアニストのスタニスラフ・ブーニンは、めったに演奏しない協奏曲を繊細に奏で、安らぎをもたらした。10組以上と協演した広島交響楽団も懐の深さを見せた。

 出演者が演奏の合間に生の言葉で発する平和のメッセージに共感や感動も広がった。どの公演も観客の反応は良く、ソプラノ歌手中丸三千繪の歌声を楽しみに来た客が米ロックバンド「シカゴ」の元ボーカル、ピーター・セテラの声に心を震わせる場面もあった。

 一方、会場の外では冷めた声も聞かれた。同市中区のイベント関係者(54)は「どんな基準でアーティストが選ばれ、一連のコンサートがどうつながっているのか分かりにくかった」と首をかしげる。

 運営面では、カナダ出身の人気歌手アヴリル・ラヴィーンが単独公演を直前にキャンセルするなど出演者の調整に追われた。一般向けのアピール不足も否めない。公演の一部をインターネットで中継したり、テレビで放送したりしたが、趣旨をどこまで広く発信できたかは未知数だ。

 作曲家でエリザベト音楽大名誉教授の伴谷晃二さん(65)は「演奏の質は素晴らしかった。ただ県民、市民から少し距離があったように思う。より多くの人が共有できる形で続けてほしい」と話した。(松本大典)

(2013年8月10日朝刊掲載)

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