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社説・コラム

『想』 山仲巌(やまなか・いわお) 広島発のグラスビーズ

 原爆で焦土と化した広島で、ガラス製のグラスビーズで世の中を輝かせようと創業して68年。私の祖父は、色のなくなった広島でビーズの製造を始めました。今では世界中で、色とりどりのビーズをご愛顧いただいています。

 形は百以上、千色のビーズを生産しています。直径1・5~5・5ミリの小さな製品です。ガラスを高温で溶かし、形や色を均質にそろえて丈夫な製品に仕上げるのは、職人たちの腕や感性にかかっています。機械の操作はマニュアル通りにできるものではなく、気温などの環境にも左右されます。精巧な技術を磨き、1粒1粒に魂を込めて作っていきます。

 創業当初は国内向けばかりでした。大量生産する安価な海外製品に対して品質を重視し、今では中国、インドネシアなどアジアや北米、欧州などの20カ国以上にも届けています。現代アートの作家から、趣味で手芸を楽しむユーザーや子どもたちまで、幅広い人に親しんでいただいています。

 創立記念日の11月3日には毎年、広島市安佐北区の工場を開放し、お客さまに感謝するイベントを開いています。国内各地から多くの人が訪れ、昨年はフランスからも駆け付けていただきました。ビーズを通じて、たくさんのご縁ができました。

 当社では朝礼で「正しく働いて明るい社会をつくりましょう」と唱和しています。2006年に家業へ移った当初、どのような意味なのかを理解できないまま唱和していました。お客さまが当社のビーズについて熱く語ってくださり、当社の製品が奇麗に縫い付けられたウエディングドレスを幸せそうに試着されている姿を目の当たりにして、少しずつ理解できるようになりました。ビーズで世の中を輝かせるという、創業者の思いに通じます。

 創業者は常々、「企業は社会の公器である」と言っていました。これからも、ここ広島から社員のみんなと共に、世界中を明るく照らしていくような製品をお届けしたいと思います。(トーホー代表取締役)

(2020年4月16日中国新聞セレクト掲載)

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