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社説・コラム

『想』 大芝亮(おおしば・りょう) 平和を学べる町・広島

 私は長年東京で仕事をしていましたが、30年以上前に国際政治学の集中講義で広島大に来て以来、毎年のように広島を訪問してきました。広島修道大でも集中講義を受け持ったことがあり、カーブの多い己斐峠をタクシーで越える時は何度か車酔いをしました。

 昨年4月から、その広島修道大にも近い広島市立大広島平和研究所に勤めることとなりました。新たに開通した広島高速4号線のトンネルには感謝です。

 広島に住みはじめて、あらためて広島は平和を学べる町=平和学のセンターとなりうる町だと思うようになりました。

 まず、「大学で学ぶ」です。広島市立大広島平和研究所では、昨年4月、平和学の大学院修士課程(平和学研究科)を開始しました。今年、被爆75年を迎えるに当たり、広島平和研究所はこれを、次世代教育を通じて被爆体験・記憶を継承していく、という決意表明と考えています。広島市役所向かいのサテライト教室で夜間授業も行いますので、ぜひ、社会人の方にも来ていただきたいと思っています。

 次に「歩いて学ぶ」です。JR広島駅に集まる内外の観光客の多さには驚かされています。赴任以来、以前の教え子たちも「いい機会」とばかりにやって来ます。原爆ドームを見て、広島平和記念資料館を訪問し、平和記念公園を散策します。夕方には広島のお酒とお魚を一緒に頂きながら感想を聞きます。「かつて、原爆ドームの保存に賛成する人ばかりではなかったと知って驚いた」という感想もあり、当時の被爆者の複雑な心境に接したのだと思いました。

 最後は、「参加して学ぶ」です。被爆75年の今年、広島平和研究所では、長崎大核兵器廃絶研究センターなどとの共催で国際シンポジウムを企画しています。また、日韓関係と北東アジアの安全保障に関するワークショップ(4、5月ごろの開催予定)なども準備中です。

 広島をこれからも平和を学べる町にするために、当研究所も努力してまいります。(広島市立大広島平和研究所長)

(2020年1月5日中国新聞セレクト掲載掲載)

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