原水爆禁止世界大会総括
13年8月12日
共闘に亀裂 溝埋まらず
求心力低下 防ぐ手だてを
9日に閉幕した二つの原水爆禁止世界大会は、日本原水協などが核兵器の非人道性、原水禁国民会議などが脱原発にそれぞれ焦点を当て、各大会のカラーが鮮明に分かれた。いずれも足元に課題が横たわり、乗り越えるための議論が不可欠だ。
原水協などは、68年前の米国による原爆投下を「人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許さなかった」と強調。国際世論の高まりに呼応し、核兵器の非人道性を国際会議やフォーラム、分科会で大きく扱った。
国際会議には計20カ国から政府代表や平和団体が参加した。大会運営委員会の野口邦和代表は「各国の主張が一致してきた」との手応えを得た。軍事的緊張や国益の観点で立場の異なる各国の主張も、核兵器がもたらす悲惨さは否定できないからだ。
しかし、世界にばかり目を向けてはいられない。核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に賛同しなかったのは、ほかならぬ被爆国日本。自分たちの政府の姿勢を転換させる手だてをもっと考えねばならない。
原水禁などは、脱原発の主張を先鋭化させた。
電力4社が7月に原発再稼働に向けた安全審査を申請した中、原発立地地域からの参加者が反対署名活動やアピールを盛んに展開。福島市から始まる大会も3回目となり、故森滝市郎・原水禁元議長の「核と人類は共存できない」の言葉の下、脱原発はあらためて運動の根幹に定着した。
日本の原子力政策が核兵器廃絶を阻害するとの視点も打ち出された。原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクル政策を、藤本泰成大会事務局長は「近隣国の安全保障を脅かし、核拡散を助長する」と問題提起した。
一方で、脱原発の強調は連合、核禁会議との共闘関係に亀裂を生んだ。3団体で開いてきた平和大会は、原水禁と核禁が主催を降りた。核禁は原子力の平和利用の推進を掲げており、核兵器廃絶の目標を共有しながら両者の溝は埋め難くなった。とはいえ、再結集を求める声も内外にある。運動の求心力低下を招かない模索が必要だ。(藤村潤平)
(2013年8月10日朝刊掲載)