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「のり付着の痕跡ない」 8・6式典 首相あいさつ読み飛ばし 原本確認の市民ら指摘

 菅義偉首相が8月6日に広島市であった平和記念式典であいさつの一部を読み飛ばしたのは、原稿がのりで付着してめくれない状態だったためとされたことを巡り、のりが付着した痕跡はないと指摘する声が上がっている。市に情報公開請求した市民たちが原本を見て確認したという。(余村泰樹)

 疑問の声を上げているのは、かつて市公文書館長を務めた愛媛大元教授の本田博利さん(73)=廿日市市=や広島県原水禁の金子哲夫代表委員(73)=中区=たち。9月22日に市公文書館で原本を確認した。

 菅首相が読んだ原稿は、A4判用紙を蛇腹状に四つ折りしたものを7枚つなぎ合わせていた。つなぎ目は2センチ幅の紙で裏からのり付けされていた。菅首相は原稿の中ほどの2ページ分を読み飛ばした。式典後、政府関係者は、原稿をつなぎ合わせる際に使ったのりが予定外の場所に付着し、めくれない状態になっていたと明らかにしていた。

 しかし、本田さんたちによると、読み飛ばした部分を含め、原稿のつなぎ目以外にのりが付着したり、付着した後にはがれたりした形跡はなかった。

 金子さんは「何度も丹念に見たが、のりが誤って付着した跡はなかった」。本田さんは「読み飛ばしたところは、あいさつの中でも重要な部分だった。ミスを事務方に責任転嫁しようとしていたのであれば許せない」と話した。

 市によると、原稿は首相が読み上げた後、演台に置いてあった。式典後に市がほかの物品とともに回収し、箱に入れて市役所で保管。数日後に職員が確かめた際は、めくれない状態ではなかったという。

 内閣広報室は「のりが付着していたとの情報は、報道でしか把握していない。事実かどうか分からない」としている。

 菅首相のあいさつでは、核兵器の非人道性や核兵器のない世界の実現に向けた努力に言及するくだりが抜け落ちた。首相は2時間余り後にあった記者会見の冒頭に読み飛ばしを認め、陳謝した。

(2021年10月2日朝刊掲載)

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