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社説・コラム

『想』 山﨑栄一(やまさき・えいいち) 吉島の魅力を伝えたい

 美容師として広島市中区吉島地区で独立して30年余りになります。開店当初、地区にある広島刑務所横の土手の桜並木の美しさに感動しました。

 開店して25年が過ぎた頃、地域のお客さまに何か恩返しがしたいと思い、改めて地域を見渡してみました。すると、お年寄りが多いことに気付きました。

 この皆さんに教えてもらい、しかも喜んでもらえることは何だろうと考え、「地域の歴史や文化を伝え残す文章を書いてみよう」と思い立ちました。

 過去に1度、吉島公民館主導で吉島について記された書物もありましたが、もう少し身近なテーマで書いてみようと思いました。

 例えば、以前、吉島の子どもが通ったのは、大手町にあった大手町中(吉島中の前身)でした。しかし当時、大手町中周辺の子どもたちは、なぜか国泰寺中に通っていました。調べてみると、大手町中は昭和28(1953)年に江波中から分離して開校したことが分かりました。それまで江波中に通っていた吉島の子どもは大手町中に行くことになりましたが、大手町の子どもたちは、既に通っていた国泰寺中のままだったようです。

 あの刑務所横の桜並木と、郷土の画家四国五郎さんの意外な接点も見つかりました。

 こんなふうに、日常の生活や風景と向き合って約5年間、中国新聞吉島販売所のフリーペーパー「ヨイショ!!」でコラムとして書いてきた地元のあれこれを、12月に「吉島の思い出~みんなの故郷」という本にして発表することになりました。

 吉島は大部分が埋め立て地で、中区でも比較的歴史は浅いのですが、原爆の爆心地に近く、被害は相当なものでした。町のほとんどは戦後、復興して現在に至っています。そのような状況下で、住民の皆さんは一生懸命、生きてこられました。

 こうした歴史的な背景や、学校、商店などの文化・経済的な内容も1話完結スタイルで文章にしてみました。吉島以外の方にも、ぜひ読んでいただければ幸いです。(美容室スタイル・カウンシル代表)

(2019年11月7日中国新聞セレクト掲載)

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