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火の海の記憶ひもとく 福山空襲 被災の5人 初の証言

 福山空襲の体験を語る会が10日、広島県福山市霞町のまなびの館ローズコムであった。被災した5人が戦後68年目に初めて公の場で体験を語り、来場者も恐怖の記憶をひもといた。市民約150人が聞き入り、不戦への思いを新たにしていた。(東谷和平)

 同市住吉町の高橋實さん(78)は「焼夷(しょうい)弾が雨のように降り注いで火の海だった」と声を振り絞った。同市明治町の松井元相さん(81)は「天守閣から火柱が上がるのを見た。青みがかった空で不気味だった」と振り返った。同市霞町の高橋義雄さん(79)は「焼けた自宅は何も残っていなかった。道路には憲兵の馬が横たわっていた。二度と経験したくない」と訴えた。

 語る会は市老人クラブ連合会の主催。同会の広保登副会長(79)が「語り継ぐことが空襲の犠牲者の供養になる」と5人を説得した。

 会場からも「夜にかなりの距離を歩いて逃げた」「防空壕(ごう)に焼夷弾が入り込んで、慌てて川に飛び込んだ」など約10人が体験談を証言した。

 同市霞町の岡山龍谷高1年高橋沙紀さん(15)は「平和の大切さが分かった。体験をしっかり受け継ぎたい」と話した。

 福山空襲は1945年8月8日深夜、米軍のB29爆撃機91機が飛来し約556トンの焼夷弾を投下。市街地の約8割にあたる314ヘクタールが焼失した。市によると354人が犠牲になり、焼失家屋は1万179戸に上る。

(2013年8月11日朝刊掲載)

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