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禁止条約 「政治生命懸けて」「一歩進んだ」 就任会見 被爆者らの声

 岸田文雄首相は4日の就任記者会見で、核兵器禁止条約の重要性を強調する一方、来年3月にオーストリアのウィーンで予定される締約国会議へのオブザーバー参加は明言しなかった。広島の被爆者や核兵器廃絶に取り組む人たちには期待と注文の声が交錯した。

 外相も務めた岸田首相は禁止条約に関し「核兵器のない世界を目指す際の出口に当たる大変重要な条約」とした上で「残念ながら核兵器国が参加していない。唯一の戦争被爆国として、米国をはじめ核兵器国を出口に向けて引っ張っていく役割を果たさなければいけない」と述べた。

 国内外で証言活動をしてきた被爆者の田中稔子さん(82)=広島市東区=は「岸田さんは自分の色を本気で出そうとしているのかも」と感じた。これまで日本政府は締約国会議への参加には否定的だったが「転換もありうる」と期待。「被爆者は残りの命を懸けている。政治生命を懸けてやり切って」と語った。

 国際平和活動に取り組むNPO法人ANT―Hiroshima(中区)の渡部朋子理事長(67)も締約国会議について「参加の可否というレベルではなく、同じく核兵器に頼る国々に議論を呼び掛けるぐらいの動きを」と求めた。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員(52)は「全体のトーンは従来の政府の姿勢と変わらない」とみるが、禁止条約を「核兵器のない世界の出口」に明確に位置付けた点は「これまでの首相より一歩進んで意義を認めた」と評価した。「今後は外務官僚を締約国会議の参加へと方向付けられるかが鍵だ」とした。(明知隼二、水川恭輔)

(2021年10月6日朝刊掲載)

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