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社説・コラム

[ムービー 空からわがまち] 比治山公園

再整備 平和実感の場へ

 広島市南区の比治山公園を空から眺めると、木々の緑に「C」字形の白い屋根が映える。市現代美術館の施設群の中央にある円形広場を覆い、欠けた部分が、約2キロ北西となる原爆の爆心地を指し示す。

 設計した建築家の故黒川紀章氏は「ここに立って市街地を見て、平和について考えてほしい」との願いを込めたという。

 市は公園一帯を「平和の丘」として再整備する構想を掲げ、本年度から着手。来年度までの1期で被爆建物の頼山陽文徳殿の改修などを進め、続く2期3年で展望施設や、オバマ米前大統領をはじめ広島を訪れた著名人の平和メッセージを刻む碑を建てる。長年の懸案となっている放射線影響研究所(放影研)の移転が実現すれば、跡地を広場にする計画だ。

 比治山公園は、標高約70メートルの比治山に市が1903年、市内初の公園として整備した。戦前からの桜の名所。政令指定都市移行を記念し89年に建った市現代美術館は第2次世界大戦以後の作品約1600点を収蔵。市まんが図書館は97年に公設初の漫画専門図書館として開館し、現在は約14万5千冊を所蔵する。

 そして再整備により「平和を実感できる場」へ。黒川氏の思想が生かされようとしている。(森戸新士)

地元のアイデア参考に

 段原地区町づくり協議会 梅田憲夫会長(70) 市や各団体と協力して花見客をもてなす「比治山 桜咲けまつり」を開くなどしてきた。ただ、木が生い茂る暗い場所があるなど課題は山積み。地元や比治山に関わる団体のアイデアを幅広く参考にして、市は「平和の丘」の整備を進めてほしい。より多くの観光客や市民が比治山を訪れ、被爆から復興した広島の街を眺めてくれればうれしい。

(2017年5月27日中国新聞セレクト掲載)

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