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社説・コラム

[復興の記憶 カープ物語 泉美術館写真展から] 「超」突貫工事(1957年4月30日)

奮闘150日 夢の器完成

 原爆ドームの左に見える家並みは、今の大手町1丁目辺り。中央にそびえ立つのは、三塁側の照明灯の脚である。広島市民球場の建設が始まって2カ月あまり。のんびりした手作業に見えるが、実際は常識外れのスピード工事だった。

 「金のことは言わずに、『100日でやれー』じゃけ」。工事を請け負った増岡組で、現場を仕切った西広一明さん(82)=広島市中区=が回想する。まだ20代前半だった。「血気盛んな若手の連中が、図面もないのに、やっさもっさやったんよ」

 西広さんによると、写真の石積みは一塁側スタンドの基礎。資金も時間もないので、土盛りだった。球団事務所や食堂が入る円弧の部分だけ、先にコンクリートで造った。写真左奥の位置になる。土盛りのスタンドは、翌年から段階的にコンクリートで整備したという。

 地盤が軟弱なため、ヘドロが出る。廃棄場所へ向かうダンプカーが、路面電車の軌道敷にベタベタ落とした。「それでも誰も文句を言わん。みんながカープにナイターを早うやらしたいと思っとったんよ」

 西広さんたちの奮闘努力が実り、「100日」より少し長い150日あまりで広島じゅうが夢見たナイター球場は完成する。(増田泉子)

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 写真展「復興の記憶 カープ物語」(泉美術館、中国新聞社主催)は9月4日まで、広島市西区商工センターの泉美術館で。大人300円、高校・大学生150円、中学生以下無料。月曜休館。

(2016年8月14日中国新聞セレクト掲載)

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